2002年 5月号


旧大蔵省の政策ミスを指摘した麻生氏

私は現在の閉塞社会の元凶は冷戦終結による米国の国家戦略に基づく米国復権戦略にある、と理解していない日本の政府行政当局にあると思う。そして、旧大蔵省が90年4月に出した一片の通達に基づく行政指導(不動産融資総量規制)に始まる一連の地価強制下落策が、現在のデフレ不況の原因であるとかねがね本誌で主張してきたが、先日、中央公論(4月号)誌に掲載された麻生太郎自民党政調会長の論文を読み、かねてからの私の論調に近いことに感慨を得た。
麻生氏はその中で『小泉内閣が真に解体すべきターゲットは、官僚主導型業界協調主義 による悪しき経済システムである。なかでも財務省は、日本を長い不況に陥れた元凶である。 当時の大蔵省は、バブルへの対応を間違えた。バブルは昔からあったし、たとえ現れても放置しておけば消えていくものだ。にもかかわらず、大蔵省は総量規制という名のもとで土地保有税、譲渡取引税などを引き上げて、地価を急激に下げてしまった。その結果、商業用地は全国平均で地価が83%も下がり、100万 円の土地が17万円になった。土地が絶対的な信用だった金融機関や企業の経営者からすれば、対応限度を超えたものである。銀行は莫大な負債を抱え込み、建設、流通、みんなおかしくなってしまった。大蔵官僚による愚策の背景にあるのは、私企業で働く者への嫉妬だろう。自分たちは東大を苦労して出たのに、残業しても官舎暮らし。かたや私大出なのに私企業の奴は家を買って、しかもそれが値上がりしている。それに対する嫉妬が根底にあってバブル潰しにかかったのだ。しかし現財務官僚にも反省がない』と、非常に厳しい指摘をしている。私は麻生氏の論文のすべてを評価するわけではないが、事業家として、社会時評エッセイストとして見れば、かなり評価できる。いま思えば、自民党総裁選で麻生氏を選んでおけば、日本は少しはいい選択だったという気もする。少なくとも総理になる人物は、麻生氏のように自分の政策を論文にして世に問うくらいの能力がなければ資格はない。
麻生氏は『インフレターゲット論も円安誘導にしても間違いであり、ペイオフ解禁も反対である。財務官僚は大蔵省に入るために勉強し過ぎて記憶力が退化してしまったのかと皮肉の一つも言いたくなる』と痛烈に財務官僚を批判するとともに、公共事業を敵視するのは間違いであると断言し、『総理は「30兆円」にこだわっているが、大切なことは何に使うかである。いま公共事業というと目の敵にされるが、公共事業とは、国家に必要なインフラを整備するためのものである。それを一律に目の敵にするのは間違いである』と、している。
これらの主張は、かつて私が本誌で述べてきた論点に近い。私の考え方に近い正論を明快に述べる政治家がいて、正直、ほっとする思いだ。
私は、政治家は自らの世界観、歴史観、国家観を持ち、世界の時事・経済・軍事に強く、国家戦略を描けなければいけないと思う。そしてそれを論文にして世に問うべきである、と言いたい。国民がどう考えているかをテレビで覚えて自説とするいわゆる「世論調査型大衆迎合政治家」が日本をダメにしている。そもそも日本における世論とはマスコミがつくりだした「ムネオ」「マキコ」「キヨミ」に見られる、主婦レベル受けのワイドショー世論である。本来、政治家は政策内容や理念を有権者に表明して、それが選挙で支持され当選し、同じ志を有する政治家が集まって政党をつくり、その多数派が政権を担うのが議院内閣制なのに、マスコミ世論に迎合するポピュリスト政治家ばかりになってしまった。麻生氏は小泉首相が躓くとしたら『自分の言った言葉にとらわれ過ぎるときだろう』と述べている。が、小泉首相は最初から自民党員でありながら「自民党を壊す」という逆説的な発想で自民党総裁に選ばれた総理なのだから、まさにパラドックスである。彼が正論を吐けば、自己矛盾に陥り存在意義を失うし、政策を変更すれば、早晩、支持率は急落し退陣は間違いないものとなる。小泉政権の後は世界観と歴史観と国家観に基づく国家戦略をしっかり持ち、国益を考え、世界の時事・経済・軍事に精通する総理の登場を望みたい。
今日の政治家、外務官僚をダメにしたのは、戦後の日本において支配される平和に甘んじて軍事にまつわることの全てを忌避してきた結果であり、軍事を知らない一国の指導者は世界にはいない。外交とは国益に沿って力の均衡をとることであり、そのための言葉での交渉が外交であり、力での交渉が戦争である。


政治家が泣いてことを済ませる国「日本」

小泉氏が総理になれたのは、自分の所属する自民党をぶっつぶすというパフォーマンスが国民に受けたわけだが、議院内閣制としては成り立たない話である。私は小泉首相の具体的な政策を是非とも知りたい。だが、いまだに彼の論文に感動した記憶はない。彼は、「感動した」とか「女に泣かれると・・・」とかの短編的、言い切り型キャッチコピーと、他人事のような言動で、世論に迎合して情に訴えるパフォーマンスの上手うまいテレビ向け政治家である。
情といえば、鈴木宗男氏の離党会見は、朝日、産経、読売とも一面トップで、彼の泣き顔の写真を掲載していた。日本の政治家はいつも泣いて事を済ませることで国民の同情を買おうとしているとしか思えない。が、男の涙はいただけない。外務省はこの際と一方的に過去の内部メモや文書までも動員して鈴木議員の追い落としを企ててきた。その無念さの涙だろうが、思い起こせば、「加藤の乱」で加藤元自民党幹事長も涙したことが思い出されるし、野上前外務次官とのもめごとで真紀子氏も泣いてみせた。加藤が泣いて、真紀子が泣いて、宗男も泣いた。日本では泣くことによる浄化作用が政治の場でも働く国である。日本の政治家には国家戦略がなく、国益を守る観点がない。その典型が鈴木宗男氏の国後島の植樹問題だろう。彼は持参した苗木の植物検疫をロシア側に求められ、それを外務省職員が拒絶したことに怒って殴打した。せっかく持ち込んだのだから植樹したいというのはお茶の間レベルの情緒論であり、国益を考えれば北方領土のロシア帰属を承認するような検疫を受けるようなことは末端の外務省職員でもできるわけがない。私は体を張って国益を守った外務省職員の行為は当然であるとは言え、今の外務省の中では賞賛されるべきだと思う。
一方、宗男氏と外務省の癒着問題は、外務省が省益しか考えない官僚組織であることを自ら暴露した。この際、宗男氏の影響力を排除しようと外務省は、5年も6年も前の内部メモや資料の自分に都合の良い部分だけを公開すべく、いきなり秘密指定を解除して出してくる。マスコミもそんな外務官僚の内部告発に基づく資料をそのまま垂れ流す暴露報道だけで、秘密解除に至った経緯やメモの信憑性の検証すら行おうとしない。選挙で選ばれた選良である議員が国民の公僕である官僚にモノを言えなくなれば、官僚による官僚のための官僚の国と言わざるを得ない。 偏差値教育を勝ち抜き、東大に入ったデジタル記憶勝者が、結果の平等を目指して非効率高物価の悪平等社会をつくってしまって日本を沈没させようとしている。現在の不況から脱却するためには、大幅規制緩和により政・官・業の癒着の弊害を正し、競争社会をつくりだすとともに、投資減税と加速度償却制度により民間需要の大規模創造を図り、大幅不動産政策減税を実施して、取得と譲渡にかかる税は一定期間0税率に、保有にかかる税は半額として、不動産の保有にメリットを付けることが必要である。サッチャー氏は大幅規制緩和を、レーガン氏は投資減税を、夲将兵登小平氏は経済特区をつくり、いずれも大幅減税を起死回生策とした。


ブッシュ大統領の最大の関心事は再選

ブッシュ大統領の支持率が9・11テロ以降、80%台に跳ね上がった。かつて彼の父親である前ジョージ・ブッシュ大統領も、湾岸戦争で80%台の支持率の時があったが1年8ヵ月後の選挙で再選されなかった。米国の2期8年しかできない大統領の1期目の最大の関心事は再選戦略である。ブッシュ大統領は、父親の轍を踏まないよう、今回のアフガンでの戦いを拡大して、イラン、イラク、北朝鮮を悪の枢軸と決めつけ、名指しに仮想敵国として愛国心を煽り、再選まで高支持率を持続しようとしている。先日、米国防省が連邦議会に提出した「核戦力体制見直し報告(NPR)」は、地表を深く貫通する能力を持ち命中精度の高い小型核爆弾の開発を唱えている。この報告は世界70ヵ国以上に計1400ヵ所以上の大量破壊兵器関連の地下軍事施設があるとしており、新型核爆弾の開発は、いわゆる「ならず者国家」からの大量破壊兵器による攻撃を防ぐため、こうした施設の破壊を想定したものだと、「核」の実用性を重視する姿勢を打ち出し、「実験なしに核戦力を無期限に維持することは不可能になるかもしれない」と、実験再開の可能性まで明記している。
 米国は人類最大のタブーとされてきた核まで動員して、更なる一極支配体制の確立を目論んでいる。ブッシュ大統領は、30年間続いたロシアとのABM(弾道弾迎撃ミサイル)制限条約の脱退や、CTBT(包括的核実験禁止条約)や京都議定書などの批准も拒否したりと、すべての条約を自国に有利な時にだけ利用していると言える。いまの米国の軍事力は巨大化して、世界の中で通常戦力で戦える国は存在しない。そんな米国は一層の世界支配を進めるべく、またこの際将来の危惧を取り除くため北朝鮮とイラクの大量破壊兵器を排除すべく、査察を強要し、査察に協力的でないと空爆の口実を作り、金正日とフセインの排除を図ってくることが十分予測される。そんな狙いから、2年数ヵ月後に第二次朝鮮戦争や第二次湾岸戦争を起こしてくる可能性も高い。クリントン氏の8年は金融戦略で、そしてブッシュ氏は軍事戦略で世界の一極支配を狙っている。
今の日本に必要なことは自虐教育を改め、自虐マスコミを糺し、国家戦略を持ち、憲法を改正し、現在の自衛隊を独立自衛の軍隊とし、現在の日米安保条約を平等互恵の安保条約に改正することである。この先予測される第二次朝鮮戦争の危機と、ますます膨張してくる中国の軍事力は、日本にとって大変な脅威である。日本はこれにバランスのとれる体制を一日も早くつくる必要がある。適切な日本の軍事力が東アジアの安定に寄与し、ひいては世界の平和と安定に貢献することとなり、これが日本の繁栄に結びつくものであると確信する。


マンション分譲情報 - アパート・マンション賃貸情報
アパホテルグループ案内 - アパグループ紹介 - ホームへ戻る