2002年 3月号


世論調査は識者の総意にあらず

 先日の時事通信社の世論調査結果によると、ペイオフ解禁について「予定通り4月に実施すべき」と答えた人が47%と、「延期すべきだ」の32%を上回った。失業や倒産が増えても不良債権処理を進めることに「賛成」46%と「反対」28%より多い。また、不良債権処理の過程で銀行の自己資本が減少した場合、金融システム安定化のため国民の税金である公的資金を投入することに「反対」60%、「賛成」23%であった。全国の成人男女2千人を対象に面接方式で実施したものという。
このアンケートの結果通り、ペイオフの解禁が行われたならば、風評被害により、まだやっていける銀行の多くが預金の取り付け騒動に巻き込まれて、預金の大量流出する事態に陥るであろう。その結果、貸し出し業務が停滞し、銀行は貸し渋りして預金の減少に対応しようと躍起になるはず。そういう状況下で、さらに不良債権の処理を急ごうとすれば、その不良債権の負担を背負い込む銀行の自己資本比率がますます減少し、貸しはがしが加速することとなり倒産が続出する。つまり、負の連鎖が止めどなく広がっていくわけである。
ましてや60%も反対する世論に従い、金融システムがおかしくなっても公的資金を投入しなければ、多くの銀行の預金が激減して、一部の健全と思われる銀行にだけ預金が集中することとなり預金が偏在し、集まり過ぎた銀行は運用もできず、預金の受け入れを停止する事態にまで発展することになろう。笑い話ではない。かつての金融恐慌時代、そのようなことがあったのだ。こういう事態となれば、銀行による資金の仲介機能は完全に麻痺し、倒産と失業者が莫大な数に上ることは言うまでもない。
私は今回の世論調査の結果を見て、対象相手のほとんどが金融システムを十分に理解していない人ばかりだったのではないかと思う。事業経営者やある程度の金融知識がある人たちを対象にしたならば、結果は全く逆のものとなったはずである。
ここまでくれば小泉首相は自らの延命のためにもペイオフの解禁は予定通り実施するであろうが、既に始まっている貸し渋り信用収縮によるリストラと倒産で、失業率が増大し続ける中、なぜあえて今、ペイオフの解禁を急ぐ必要があるのだろうか。
地価と株価がスパイラルに下落しデフレ不況の最中、不良債権の処理を急げば、さらなる不良債権の発生を生むだけで、処理しても処理しても一向に不良債権は減るまい。減るどころか増える一方であろう。その不良債権処理を急ぐべき、と小泉首相は言っているが、結果はどうなるか。一気に倒産と失業が増えるだけである。小泉首相の公約の一つである国債30兆円枠についても「守るべき」と答えた人が48%もいた。確かに、造ったときから壊すまで赤字が予測される箱もの公共工事で造った赤字を孫子の代まで先送りするのは忍びない。が、孫子の代にも有益なインフラ投資をカットしてまでこだわるべきだろうか。民需が停滞している今こそ、公共部門の需要創出を図るべきであって、30兆円枠を足かせにすべきではない。
このところ私には、小泉首相の掲げる公約のすべてが、日本を破滅に追い込む時限爆弾の点火装置に着火して歩いているように見えてきた。このままでは、痛みが痛みだけで終わらない。


外資の企み「グローバリズム」

 現下の政策不況は、冷戦勝者米国による日本弱体化計画に沿った対日国家戦略である。そして今日、今現在も、日本の優良資産がどんどん外資に買い叩かれている。この先さらに円安が進めば、外資にとってさらに日本の優良資産を割安に買える好機を与えることとなる。外資はグローバリズムの名のもとに、格付け会社ムーディーズやS&Pなどを使って勝手格付けなどにより、「企業の格付を下げたり」「不良債権の処理を急げ」「ペイオフ解禁を予定通り行え」「銀行は保有株を売れ」「BIS基準を遵守しろ」「構造改革を急げ」「国債発行額をこれ以上増やすな」「株式の持ち合いをやめろ」「キャッシュフロー重視の経営を」「時価会計制度を導入しろ」と声高に外圧をかける始末である。
こうした外資の企みを垣間見れば、小泉政権の改革という名の愚行が誰の利益に沿うものなのか、我々国民はよく考えねばなるまい。自虐的な政策を推し進めようとしている小泉首相と、その彼の改革を安易に支持するアンケート結果が指し示すものは、「自虐国家が自虐史観に基づく自虐教育で、自虐国民を育てて、自虐マスコミに煽られて、自虐政治を行ない、外資に日本の優良資産を安値で叩き売りさせている」ことである。自虐国家に国益がないのは当然。国益のない国に国家機密はない。
先日の新聞の囲み記事で、中国が江沢民国家主席の専用機として米国のボーイング社より購入した767型機に27個もの盗聴器が仕込まれていたと報じられていた。中国情報当局が発見したと記されていたが、私にすれば、何を今さら、である。政府首脳のいるところに盗聴器を仕掛けようとするのは当然で、相手の方だって同じことをしようとしている。
かつて、米国が旧ソ連に大使館を建設していた時のこと、ソ連の諜報機関KGBが仕込んだと思われる盗聴器がかなり発見され、完成途上の大使館を解体してしまった。世界中で今なお、盗聴、暗号解読、ニセ情報、かく乱情報の流布など宣撫工作と謀略宣伝など、虚実とりまぜての情報宣伝戦が盛んに行われている。
まもなく新しい首相官邸が完成するが、誰が工事を監視しているのか。この官邸の中にいかにして盗聴器を仕込むか、目下、世界中の諜報機関が虎視眈々と狙っていることだけは間違いない。日本にそんなにしてまで守るべき情報があるのか、と勘繰る向きもあろうが、本命は日本にもたらされる「外国からの情報」を盗聴することにある。
しかし一方では、これほど盗聴にオープンな国に、本気で極秘情報を流す国があろうとは思えない。日本の友好国でさえ、おそらく大切な情報は絶対漏らさないはずである。今回の外務省の移転にしても、米国をはじめ友好国は呆れて見ていることだろう。耐震工事のために霞ヶ関の本庁舎から民間のビルを間借りして、首相官邸から遠ざかり連絡体制の不備が指摘されているが、それ以上に、外務省の情報はこれでほとんどフリーパスに漏洩してしまう。しかも、引越し先の上層階はマンションで、エレベーターが混みあうから時差出勤制度をとるという。国家機密を扱い、緊急時に迅速に駆けつけることが求められている省庁としてはいかがなものか。ここまでくると、滑稽ですらある。
 どうして日本は国益を考えない国になってしまったのか。国益を論ぜねば、極秘情報が盗聴されるという不安や危惧は生まれるべくもなく、国益を守るための防諜の意識も芽生えることはない。
 日本の自衛隊は、国土防衛のための警察予備隊として創設された生い立ちを顧みれば、致し方ない面もあるが、今、日本が攻撃された場合、現行法規では戦車は道路を走行できず、陣地の構築も確認申請や開発許可が必要である。何をするにも、あらゆる現行法とバッティングして、ほとんど緊急事態に対処できないのが現実だ。有事法制を整備しない限り、多大な負担をしながら適切な戦力を発揮できず、自衛隊員に欠陥だらけの法体系のもとで危険を顧みず国のために戦いなさい、と言えようか。
 有事法制整備の論議を促進するきっかけともなったのが、先日の海上保安庁による不審船の追跡と交戦である。かつて不審船を取り逃がした苦い教訓から法律を改正することで今回は警告射撃、正当防衛による攻撃となり、捕獲を恐れた不審船は、証拠隠滅を図って自沈した、とは言え15名の乗組員の全てが溺死と行方不明とはいかにも不自然であり、生存者の存在が国籍、侵入意図の証拠となることを嫌った誰かの指示で敢えて見殺しにしたとしか考えられない。当然に早急に船体を引き上げて、国籍や搭載装備、武器の種類、侵入の目的などを調査すべきであるが、このような経緯を考えれば、米国の指示でもなければまず引き上げはしないであろう。


国家の体をなしていない「日本」

 冷戦が終結して現実的脅威が旧ソ連の北方脅威から、北朝鮮や中国の西方脅威に移り変わっている。にも拘わらず、現行の自衛隊の対応は北方シフトのまま。今や日本の仮想敵国は北朝鮮や中国は言うに及ばず、わが国を取り巻くすべての国と認識したほうがよい。そのためにも、緊急事態が発生した場合の、あらゆる場面に対応できる法体系の整備が急がれるのだ。
 こうした有事論議も国益もなおざりにして、外務大臣と外務官僚との確執と、そうした下世話な話題を好んで報じるマスコミばかり。外務省のみならず、日本の政治家も、官僚も、戦後56年間に亘って、国益を考えずにのうのうとやってこられたのは、支配される平和に甘んじてきたにほかならない。ゆえに国益を論じる必要がなかったともいえる。本来、国が国民の安全と財産を守る対価として国に税を払い、徴兵の義務を負う。それが国としての基本と考えれば、今の日本はその体をなしていない。
 米国は、冷戦時に漁夫の利として日本が貯め込んだ金融資産を獲り返そうと狙いを定めている。そう考えれば、政治家も官僚もマスコミも一体となって、こうした意図を看破し防衛戦に取り組まなければならない。
 「外交とは力のせめぎ合いである。」こうしたことが日本ではまるで分かっていない。政治家も官僚もマスコミも全く軍事常識に疎く、戦略も戦術もない。古今東西の常識に無知である。新しい首相官邸にどれくらいの盗聴器が仕込まれているのか、誰も本気で考えたことはない、取り敢えず現在の首相官邸をまず調べてみることだ。おそらく相当数の盗聴器が見付かることだろう。そんな出来事はスパイ映画の世界だけのように考えてきた日本はなんと幸せであったことか。
 無策でパフォーマンスだけの小泉首相が高支持率なのは、国家観も外交常識もないが一手にマスコミや野党の矢を引き受けてくれ、話題性のある田中外相に救われている面が強い。しかし、いかに真紀子ブームに支えられて支持率が高いとはいえ、土地安・株安・円安で失業率と倒産の激増で日本を破滅に追い込んでいる小泉首相には退陣を望みたい。さもなくば、攻めぎ合いが激しいこの21世紀に、経済大国と言われた日本も三流国家に転落してしまう。
 これからは、自虐的国家から脱却を目指し、自国に自信と誇りを持ち、創造力を高め、何が真実かをディペートを通じて掴みとる教育を施し、明日の日本を築き上げ、世界に通ずる人づくりをしていかなければならない。世界観も歴史観も国家観も持たず、国益を考えない無責任な無国籍人間をこれ以上生み出してはならない。



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