南京大虐殺に謀略の新事実
週刊ダイヤモンド誌2001年12月1日号に、桜井よしこ氏の執筆記事「南京事件に関する新事実 まさに歴史を見直すべき時」が掲載されていた。
この記事の冒頭に「歴史を振り返るとき、常に私たち日本人の心の傷としてとらえざるをえないのが南京事件である」と書かれているように、戦後教育を受けてきた私にとっても桜井氏と同じように「中国側のいう30万人の虐殺はありえないことだが、小規模ながら一般市民の虐殺はあったのではないかとの見方をぬぐい去ることができない」ことは確かだ。しかし、桜井氏によれば、北村稔立命館大学教授の著書『「南京事件」の探究(文春新書)』によって、その疑心に曇った目が大きく開かれたという。
この北村氏の本では、南京事件を最初に世界に知らしめたのは、事件の翌年に出版されたオーストラリア国籍の記者・ティンパーリーの書いた "What War Means: the Japanese Terror in China" であり、著者のティンパーリーは実は公平なジャーナリストなどではなく、蒋介石の国民党の対外宣伝工作に従事していたと記されている。
この驚くべき事実は国民党中央宣伝処の曾虚白処長の自伝によるもので、そこには次のように書かれている。
「ティンパーリーは都合のよいことに、我々が上海で抗日国際宣伝を展開していた時に上海の『抗戦委員会』に参加していた三人の重要人物のうちの一人であった。(中略)我々は秘密裡に長時間の協議を行い、国際宣伝処の初期の海外宣伝網計画を決定した。我々は目下の国際宣伝においては中国人は絶対に顔を出すべきではなく、国際友人を捜して我々の代弁者になってもらわねばならないと決定した。ティンパーリーは理想的人選であった。かくして我々は手始めに、金を使ってティンパーリー本人とティンパーリー経由でスマイスに依頼して、日本軍の大虐殺の目撃記録として2冊の本を書いてもらい、発行することを決定した」。
こうして極めてタイムリーに日本断罪の書が出版されたのである。公平な第三者の著作のはずが、実は国民党宣伝部の資金を受けた人物によって書かれたものだったというから恐ろしいことだ。この本が資料をもとに明かす数々の事実が、南京虐殺はやはり存在しなかったのではないかという結論を桜井氏に与えるに十分だったといえよう。その桜井氏は最後に語っている。
「何が歴史の真実に近いのかを一人ひとり考えてみてほしい。事実は目前に見えている。まさに歴史を見直すべき時なのだ」と。
私はこの執筆記事を読んで、南京大虐殺が事実であるか否かさえも十分検証もせずに一方的に甘受し、ODAを続け、自国の教科書も自由につくれず、謝罪外交に明け暮れる自虐的行為を新世紀になった今なお引きずっている国の一人として嘆息するばかりである。
大東亜戦争の真の総括を放棄してきた結果が自虐史観に捕らわれ享楽志向一辺倒のマスコミを産みだし、またディベートもせず歴史観も倫理観もなく自ら考えることもしないデジタル記憶勝者をつくりだしてきた偏差値教育を産みだした。その結果、国家観も世界観も持たない政治家と、中堅ゼネコンの倒産をその下請け業者や資材納入業者の痛みも省みず「倒産は構造改革が順調に進んでいる現われである」とコメントする総理、さらに天下り先の確保と省益に捕らわれるばかりで国益も国民も考えず、また選挙の洗礼も受けずに、政治家の上に君臨する官僚を政府中枢に溢れさせることとなった。
そういった閉塞社会をつくり上げてしまった元凶が、日本人の心の傷としてずっとぬぐい去ることができなかった「南京事件」にあるとしたら、誤った歴史観の成せる業とは国家の存亡をも左右するほど重大な問題と言わざるを得ない。そして、今も続く謝罪外交や、教科書検定、靖国神社参拝などにおける内政干渉ともいうべき他国からの糾弾の所以ゆえんも、この南京事件に端を発しているといったら考えすぎだろうか。
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