ペイオフ解禁は命取り
先日の日経新聞の社説を要約すれば、「政府は金融機関の経営に不安はないとして、予定通りペイオフ凍結の解除を主張しているが、今必要なことは、公的資金投入等で金融システムの安定化を計ったうえで、予定通りペイオフ凍結を解除すべきで、銀行に不安はないのでペイオフを解禁するというのはあまりに無責任である。そしてもっと最悪なのは、金融システムに対する不安に応えないまま、結局、ペイオフの最延期に追い込まれることである。」とあった。
この社説を読んで、私は政府の「銀行に不安がないのでペイオフを解禁する」という言い草を鵜呑みにする人間がこの日本に何人いるだろうかと思うとともに、日経新聞に対しても、現下の情勢に鑑みペイオフ解禁をしても金融システムに不安が無いようにするのには、銀行にどのくらいの公的資金の導入が必要になるのか、またその資金を投入して一時不良債権を処理しても、新たな不良債権の発生の原因である資産デフレに歯止めを掛けずに不良債権問題は解決できるものなのか、本気で問い質してみたいと思った。
金融システムを破綻寸前にまで追い込んだ元凶は地価と株価の下落である。いつまでも続くこの地価の下落に歯止めをかけることが金融システムの安定、ひいては日本経済の復活に不可欠な施策であることは、私は毎回このエッセイで述べ続けてきた。日経の社説がそのことには全く触れず、政府のペイオフ解禁について「無策で再延期は最悪」と論じるこの社説に少なからず不安を感じた。
公的資金の投入で今ペイオフを実施しても、金融システムに揺らぎのなくなるまで投入するとなると、その金額は膨大なものになる。そして、そのことは金融機関のすべてを実質上の国有化することにつながり、これは政府の徳政令であって、超膨大な税の投入が必要である。
金融監督庁が掌握している大手30社を処理すれば景気は良くなるなどという甘い観測は通用しない。大事なのは、ここまで巨大化した不良債権の処理を短絡的に急がせることではなく、今は不良債権のさらなる発生を防ぐことである。そのためには、これ以上の地価と株価の下落を絶対にさせないことだ。
株価の下落の根本原因はいつまでもスパイラルに続く地価下落にあると言ってもよく、この地価のさらなる下落を防ぐために、私が毎回口を酸っぱくして述べているのが、「不動産に対する取得と譲渡と保有にかかる税の大幅減税」である。時限立法でもよいから思いきって取得と譲渡にかかる税を0税率とすべきである、とかねがね言い続けているものの、いまだマスコミも政治家もエコノミストといわれる経済評論家も、そのことにはほとんど触れない。
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