株価最安値更新が告げる現実
ついに日経平均株価がバブル後最安値を記録した。一方、地価もバブル崩壊以降10年連続で値下がりし続けている。冷戦終焉後、東側の低賃金労働力が西側諸国に流れ込み、商品価格が下落したことは悪いデフレではなくこれは歓迎すべきことで、金利上昇・債券バブルの崩壊を誘発させるインフレターゲッティングは論外である。むしろ今は資産デフレとも言えるスパイラルな地価の下落と株価の暴落に早急に手を打つべきだ。
上がりすぎたバブル期の地価が値下がりし、収益還元法に基づく価格に収斂しゅうれんされることは当然のことだが、既にこれをも下回っているところも多い。このように限りない暴落に至る原因に、不動産にまつわる苛酷な税制があることは明らかである。取得にかかる不動産取得税と登録免許税だけで購入価格の2割を上回ることもあり、また、その保有にかかる固定資産・事業所税が全額借り入れして購入した金利をも上回るなどの懲罰的不動産諸税を改善しない限り、日本の地価はまだまだ下がり、不良債権は増大し続けるに違いない。
地価が下がると株価が下がる。なぜなら、土地の値段が下がれば、企業の保有する土地資産の評価が下がる。企業の資産価値を反映するものが株価であれば、当然、株価は下がるということになる。不良債権の処理を急げと叫ぶマスコミや日銀・財務官僚・政治家・エコノミストなどは、いつも株価の下落だけを騒いでいるが、その原因である地価の下落に関して誰も言及しないのは本当におかしい現象である。金利が下がり、地価が下がり、株価が下がり、円安となれば、ドル建てで計算する外資から見れば、鴨がネギを背負って鍋をかむってやってくる状況である。日本の政治家やマスコミは、今、日本が買い占めされそうになっている現状にまったく気付かず、何らの警戒心もない。
日本は戦後、国家戦略を持たず一国平和主義に甘んじ、国の基本である防衛さえ米国に依拠して、アメリカから与えられた憲法を後生大事に、経済活動だけに専念し、東西冷戦時は漁夫の利を得て膨大な富を蓄積してきた。米国にすれば、日本人は物造りをして付加価値を作りだし、金を儲けて貯める能力はあっても、浪費する心配はないことを見抜き、冷戦時はそのまま安心して貯めさせてきた。それが冷戦終結を機に、自らの貯金を下ろすがごとく、この蓄えられた1400兆円の金融資産を狙って外資が暗躍し始めた。
そして、この数年の間に日本の優良資産の2割近くは既に買い占められたと言っても過言ではない。
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