2001年 10月号


株価最安値更新が告げる現実

 ついに日経平均株価がバブル後最安値を記録した。一方、地価もバブル崩壊以降10年連続で値下がりし続けている。冷戦終焉後、東側の低賃金労働力が西側諸国に流れ込み、商品価格が下落したことは悪いデフレではなくこれは歓迎すべきことで、金利上昇・債券バブルの崩壊を誘発させるインフレターゲッティングは論外である。むしろ今は資産デフレとも言えるスパイラルな地価の下落と株価の暴落に早急に手を打つべきだ。
上がりすぎたバブル期の地価が値下がりし、収益還元法に基づく価格に収斂しゅうれんされることは当然のことだが、既にこれをも下回っているところも多い。このように限りない暴落に至る原因に、不動産にまつわる苛酷な税制があることは明らかである。取得にかかる不動産取得税と登録免許税だけで購入価格の2割を上回ることもあり、また、その保有にかかる固定資産・事業所税が全額借り入れして購入した金利をも上回るなどの懲罰的不動産諸税を改善しない限り、日本の地価はまだまだ下がり、不良債権は増大し続けるに違いない。
地価が下がると株価が下がる。なぜなら、土地の値段が下がれば、企業の保有する土地資産の評価が下がる。企業の資産価値を反映するものが株価であれば、当然、株価は下がるということになる。不良債権の処理を急げと叫ぶマスコミや日銀・財務官僚・政治家・エコノミストなどは、いつも株価の下落だけを騒いでいるが、その原因である地価の下落に関して誰も言及しないのは本当におかしい現象である。金利が下がり、地価が下がり、株価が下がり、円安となれば、ドル建てで計算する外資から見れば、鴨がネギを背負って鍋をかむってやってくる状況である。日本の政治家やマスコミは、今、日本が買い占めされそうになっている現状にまったく気付かず、何らの警戒心もない。
日本は戦後、国家戦略を持たず一国平和主義に甘んじ、国の基本である防衛さえ米国に依拠して、アメリカから与えられた憲法を後生大事に、経済活動だけに専念し、東西冷戦時は漁夫の利を得て膨大な富を蓄積してきた。米国にすれば、日本人は物造りをして付加価値を作りだし、金を儲けて貯める能力はあっても、浪費する心配はないことを見抜き、冷戦時はそのまま安心して貯めさせてきた。それが冷戦終結を機に、自らの貯金を下ろすがごとく、この蓄えられた1400兆円の金融資産を狙って外資が暗躍し始めた。
そして、この数年の間に日本の優良資産の2割近くは既に買い占められたと言っても過言ではない。


地価下落に誰も異を唱えない不思議な国

 不動産の現行税制は、土地の流通促進を前提としたものになってはいない。不動産ーその名の通り、動かさざる産として動かせば動かすほど不利になるのが実状である。しかも、日本の資産のかなりの部分がこの不動産と株式、そして預貯金である。その預貯金は0金利でほとんど利息が付かず、不動産と株式は大幅に下落し、どんどん目減りしている。外資はこの不動産と株式に狙いを定めて、ヘッジファンドを駆使してこの資産デフレ時を千載一遇のチャンスと捉え大活躍している。その外資は外貨を持ってきて日本の優良資産を買い占めているのではなく、リスクをとらない日本の金融機関や個人の低利資金を集めて、日本の優良資産を買い叩いているのだ。資本に国境はないとはいえ、貸渋りで欲しい物件があってもなかなか買い取れない日本の企業をしり目に、外資は優良企業の株を買い占めたり、M&Aで傘下に収めたり、不良債権がらみの日本の優良資産を証券化し、不動産諸税を払わずバルクで一括買いして巨万の利を得て、また日本の企業に高値でバラ売りを図っている。
本来、日本は今のこうした近隣諸国の低賃金労働力の参入によるデフレをプラスと捉えて、豊かさを実感できる国にしていかなければいけない。言いかえれば大胆な構造改革を図り、日本一国資本(社会)主義といってもよい「非効率・高物価社会」の元凶である政・官・業の癒着構造を断ち切らねばならない。そのためには抜本的な行政改革で、公社・公団・特殊法人とその関係会社の全てを廃止ないしは民営化するとともに、大幅な規制緩和で現在の日本の官僚支配システムを打破すべきだ。そして国民に奉仕する、スリムで機能的で合理的な政府を目指すべきである。
低賃金労働力の参入は、歓迎すべきだとはいえ、治安悪化の原因ともなっている蛇頭の手による不法な密入国は絶対に見逃すことはできない。
非婚・晩婚・少産化からくる人口減少をカバーすべく、正規のルートで計画的に移民を受け入れ、シンガポールにおけるフィリピン人や、ドイツにおけるトルコ人、アメリカにおけるメキシコ人のように、日本でも気軽に外国人を雇用して豊かさの実感できる国にしていかなければならない。
また、3分の診察に3時間も待って、老人達の社交の場と化した病院は、検査漬け、薬漬けで限りなく医療費を増大させている。そして、インフォームド・コンセントも導入せず医療ミスを頻発させ、健康な人が病院に行ったら病気になる、といったようなジョークそのままの実態を、本当に人々に必要な医療制度に切りかえていくべきである。
臓器移植医療にしても、日本ではもっとも遅れていて、多くの必要な人はアメリカに行ってお世話になっている現状であり、もっと臓器移植の意志が簡単に伝えられ、多くの人から協力を得られる方法を模索すべきである。
現行のドナーカードの携帯ではだめで、アメリカのように免許証にイエス・ノーを示すシールを張りつけるというのはどうだろうか。自分にその意志が無くなったときにはそのシールを外し、その意志が生まれればまた添付するというのはいかがだろうか。また、誰が見ても首を傾げてしまう現在のドナーカードのデザインはなんとかならないものか。羽根をはやした天使のイラストが微笑むこのカードを例に挙げても、日本はなんとデザインセンスがない国なのか。そして誰もがおかしなデザインだと分かっていても指摘もしないでそのまま続けている。そしてその間、多くの臓器移植医療を必要としている人たちがドナー不足で死んでいっている。
権威ある機関で一旦決められれば、それがおかしいと思っていても誰も言い出せない。取り敢えず、刺激や摩擦を避けて、自分に利害が及ばないことは見て見ぬふりをする。


平和の配当

 本来、東西冷戦の終結によって得られた平和の配当を皆で享受し、すべての人々が個々の信念のもと、健全な家庭を築き、家族の期待と本人の希望で学び、必要に応じて働き、創造の喜びを味わい、個人は社会に貢献し、社会は個人の権利を守り、争い事を排除し、安全で安心でき、仲良く健康で長生きし、美味しいものを食べ、明るく元気で豊かで楽しく、芸術を鑑賞し、スポーツやゲームや旅行を愉しむ。そんな素晴らしい、やりがいのある人生をエンジョイできる社会を築くことが求められている。
力の論理に基づき、独立自衛の軍隊と平等互恵の日米安保体制を確立することは、21世紀の日本が国際社会の中で平和に正当な権利を主張して生き抜いていくに必要な条件である。
教育を通じて、正しい歴史観と世界観を育み、そういう方向に国民世論と政治を変えていかなければならない。政治は官僚がするものと、国家観も歴史観も世界観も国益も論じずに党利党略に明け暮れ、自らの議席の維持だけを考えている政治家が今も跋扈ばっこしている。また、国益よりも省益と天下り先のことばかり考えている官僚が蠢うごめいている。政治家も官僚も変わらぬまま、だんだん景気が悪化していっているのに何らの手も打たず、景気対策より聖域なき構造改革だと唱えている小泉総理。そして天に向かって唾するがごときマッチポンプの日本のマスコミの意を受けての、中国や韓国の抗議に屈して、自国の戦争に殉じて犠牲となった人たちを祀ってある神社の参拝もままならぬ小泉総理と、それを追いかけるマスコミの姿を見て、早く一人前の国になるべきだと痛感するのは私だけではないはずだ。


偏差値教育と自虐史観が国を自壊に導く

 こうした体たらくの政治家が蔓延する国だからこそ、円安、低金利、地価下落、株価下落の自虐的政策不況の今が、外資から見れば千載一遇のチャンスとしか映らない。日本の低金利資金をもって、日本の優良資産をまとめて買い叩き買い占め、それをバラしてまた日本に高値で売り付け、巨万の利益を持ち帰っていく。これはリスクをコントロールする外資と、まったくリスクをとれない日本のサラリーマン社長との差である。
日本の一流企業のサラリーマン社長は、すべて過去の慣例・事例には詳しいが、未来を決断できない記憶力重視の高学歴偏差値エリートである。もちろん、国が丸抱えの金融機関も官僚も政治家も、第4の権力者としての機能をまったく果たしていないマスコミも、全て偏差値エリートである。これは東大法学部を頂点とした学歴社会が産んだ弊害である。そして今、「YAHOO!」の検索の前に、この偏差値エリートの権威が音を立てて崩れ去った。
私は言いたい。日本の教育も記憶力重視の偏差値重視から脱却して、ディベートを通じて本物を見付けだし、経験や見聞を通して学習し、自らの歴史観と世界観を磨き、これを縦軸と横軸に有り得ることと有り得ないことを見抜き、心理学と統計学を駆使し、リスクを計算でき、決断実行できる人間を教育していかねばならない。このままでは、外資はこの先5〜6年で日本の優良資産を根こそぎ持っていってしまうに違いない。それは、漁夫の利で得た不労所得であると考えれば、当然といえば当然だが情けない。
いま、我々は亡国の淵にある。いつまでも自虐的謝罪外交を求めるマスコミと、政・官・業の癒着の官僚政治から決別し、非効率・高物価社会を正し、真の資本主義市場経済社会を築き、自虐史観と記憶力重視の偏差値一辺倒の教育を一刻も早く改めていかなかければならない。
しっかりした国家観のもと、最大多数の最大幸福の実現を目指す機能的で小さな政府を一日も早く作りあげ、中国・ロシア・北朝鮮・韓国など日本を取り巻く国々に変な期待を抱かせない、確固とした独立国日本の実現を願ってやまない。



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