2001年 7月号


小泉改革政権の誕生

 自民党の総裁選挙で選ばれ、総理となった小泉純一郎氏。当初の苦戦の予想が予備選の導入により思わぬ大勝となり、高支持率を得ていることは快挙である。
総裁選挙で大勝したことと、高支持率を維持していることの大きな理由の一つに、田中真紀子氏の全面的な応援を受けて総裁選を戦い、その田中氏を外相に起用したことが挙げられる。
田中氏が自ら望んだとされる外務大臣。その外務官僚といえば、独自の外交官試験を経て選ばれたとの特権的エリート意識が強く、エリートの特性として自らが貶おとしめられることを極端に嫌うが、強権には迎合しやすく、長年に亘って、中国外務省の東京支局と言われるがごとく恫喝どうかつに屈して、多額のODAを垂れ流しながら、感謝もされずに言われるままに国益に反した謝罪外交を繰り返してきた。これほど自国の国益を考えず他国のお先棒を担いできた外交官は世界中どこを探しても見付かるまい。
国益追求のための機密費が、外務省の組織ぐるみの遊興に長年に亘って使われていたことも、外務省の特権的おごりであり、国賊的行為で正に平和ボケの証である。そんな実態を田中外相が「伏魔殿」と呼ぶのは当然である。対ロシア北方領土問題に関しても、影の外相として君臨してきた橋本派の鈴木宗男氏らが進めてきた「2島先行返還論」に異議を唱え、「4島一括返還」を主張した辺りは、高く評価したいものだ。
しかし一方では、やや勇み足、認識不足の発言の多いことも否定できない。日中国交回復時、ときの田中角栄首相の令嬢として訪中に同行したよしみもあってか、中国外務大臣との電話会談で政府統一見解でもない「李登輝前台湾総統のビザは今後は発給しない」と発言したことは外交の継続性からしてもおかしなことだし、アーミテージ米国務副長官との会談をドタキャンしたこともいただけない。アーミテージ氏はブッシュ大統領の親書を持ってきたうえ、彼はアジア外交のスペシャリストで、大変な知日家であり、日米同盟強化を進めようとする対日政策立案遂行の中心人物である。国会で親書の内容に質疑が及ぶや、事務方からまだ聞いていないと答えてその後訂正するなど、田中外相は国務大臣としての資質を問われても致し方がない。
ただ、こうした不用意なビザ不発給発言や会談ドタキャン問題が大きく報じられる背景には、田中外相と外務官僚との軋轢あつれきが存在することは言うまでもない。すなわち、外務官僚が田中外相を失脚に追い込むために仕掛けた巧妙な罠わなの匂いがする。アーミテージ氏との会談の重要性も、親書の内容も十分にレクチャーせず、中国外務大臣との電話会談においても、前内閣での李登輝氏に対するビザの発給経緯の説明なども不十分で、せっかく森前総理が決断した行為を無に帰すような電話での発言をリークするのは、狡猾な外務官僚の「外相潰し」以外のなにものでもない。
現在の小泉・田中内閣と言ってもよい80%超のバケモノ支持率を誇る小泉政権にダメージを与えるには、田中外相潰しが一番と狙い撃ちされている観も強い。
新しいものを創るには既存の慣例と機構をぶち壊わさねばならない。「破壊があってはじめて、創造できる」のである。その破壊者としての役割を立派に果たしているのが田中外相で、これが創造的な破壊であれば申し分ないが、そのためには自らをきちんとサポートするシンクタンクやブレーンで周辺を固めることが必要である。とにかく、田中真紀子外務大臣以外に、今の外務省を抜本的に改革できる人材は見当たらない。その田中氏を起用した小泉総理には、彼女を擁護しながら非効率・高物価社会の元凶である、政・官・業癒着のトライアングルを大胆に破壊してほしいものだ。


数合わせの連立政権を衆参同日選挙でぶっとばせ!

 李登輝前台湾総統へのビザ発給や、「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書を検定合格させるなど、森前総理は長らくおざなりにされていた自国の国益と独立国としての誇りを守るという方向性を果敢に示した。
そもそも、自国の教科書を作成するのに他国の意見を聞かなければならないとはなんとも馬鹿馬鹿しい限りだ。本来、歴史はその時のその国の国益に沿って、その国の権力者が書き替えてきたものであり、主権在民の今、日本の歴史観は日本国民の国益に沿った歴史認識であり、国を超えての歴史観の統一など図れるものではない。少なくとも他国の教科書作成にくちばしを挟むのは内政干渉であり、中国の教科書を読めば、日本人として指摘したい箇所が山ほどあるはずだ。「恫喝すれば屈して金を出す」といった誤ったシグナルを中国に出し続けてきた過去の自民党(経世会)と外務省の責任は極めて重いと言わざるを得ない。
そうした誤った姿勢を正し、永住外国人地方選挙権付与法案についても、公明党は即採決を強要しているが、小泉首相は「極めて慎重だ」という発言に見られるように、採決の見送りの可能性を言及している。日本に帰化すれば、いつでも選挙権が与えられるのに、自らの国籍とその国での選挙権を残したまま、日本でも選挙権が欲しいとはとんでもない厚かましい発想である。かつて「ばら撒き」の典型と言われた地域振興券やその他の愚策が多い公明党の言いなりになってはならない。小泉政権が大胆に「日本を変えていく」とは、既存のタブーに果敢に挑み、政策の一致する野党議員とも連帯して、官主導の戦後体制の全ての既存権益を大胆に破壊し、行・財政改革により、効率的な小さな政府を作り、真の資本主義市場経済社会を実現することである。憲法改正、首相公選制の導入、集団的自衛権の行使の権利の確保、道路公団や住宅公庫の民営化、靖国神社参拝の明言など、かつての内閣では言い出せなかったことを次々と言えるのは、バケモノ的高支持率の成せる業である。
私の米国の友人が「自民党政権が変わったのではなく、同じ森派の小泉氏が総理に選ばれたことで、いきなり支持率が十倍に変わるとは日本はとても恐い国だ。本当に民主主義の国なのか」と言ったことを思い出す。しかし、これまでの世論はマスコミ世論であって、国民がよく考えての世論ではなかった。それが今回の総裁選に党員による予備選を導入したことで、本当の国民の世論を反映した選挙戦が行われたことを切っ掛けに、今までマスコミにより黒を白と言いくるめられても鵜呑みにしていて見えなかった王様の真の姿が、裸であると見えてきた結果であると言っても過言ではない。
このことが、期せずしてパンドラの箱をひっくり返したような画期的な支持率となったわけで、マスコミが公正に真実のみを報道し、国民が冷静に判断していれば、森前総理も本当はあんなに低い支持率ではなかったはずだ。そして小泉政権のこんなに高い支持率もいつまでも続く保証はない。しかし、この高支持率の今こそが、戦後の呪縛から解き放たれる絶好の機会である。これまでおかしいと思いながらも、教科書で教わったことが世に出て毎日のように新聞やテレビで報じられれば、誰もがそれを正しいと錯覚してしまう。「裸の王様」の例えのように、そう見えるのは自分だけだという暗示に掛けられ、王様は裸だと言えなかったと同じように。
それが今、小泉総理がはっきりと「今までのタブーがタブーでなくなった」と公言したことで、大きな戦後の転換点を迎えようとしている。今まで政治に関心が持てず、投票率も伸びなかった大きな理由に、この10年に亘って、本来なら「水と油」のように政策の異なる政党が数の論理のために連立を組んでいることに対する国民の白けがあった。大政党が小政党の政策を実行せざるを得ないという弊害であり、今回のバケモノ的高支持率実現は、まさに尻尾に胴体が振り回されているといった公明党主導の自公保連立政権に辟易へきえきし、連立解消を求めた一般世論の爆発である。この千載一遇のチャンスの今こそ、思いきって衆参同日選挙を決行すべきである。そしてこの選挙に大勝利して、一気に自公保連立政権を解消し、政策で一致する政権を樹立すること。憲法改正により国家と国民に奉仕する独立自衛の軍隊を保持し、日米安保を平等互恵の相互条約に改定し、もって自国の文化と歴史に誇りと自信を取り戻し、東アジアの安定に寄与し、ひいては世界の平和と繁栄に貢献することが必須である。


タブーにチャレンジ!今こそ新しい日本へ転換点

 現在の道路特定財源としての目的税の使途の限定をぶち壊し、際限ない国債の増発に歯止めをかけ、この先予測される国債バブルの崩壊とスーパーインフレを回避するためにも、毎年の国債の発行額を30兆円以下に抑え、地方交付金や公共事業費を大幅に見直し、削減することを小泉内閣は実現しようとしている。健全財政を目指すには、こうした努力とともに、私の持論である「10年に亘ってスパイラルに続く地価の下落に歯止めを掛ける」こと。それには余りにも高止まりの不動産諸税を、大幅に減税することが最も有効である。「土地の取得と保有、譲渡にかかる税」の大幅軽減措置により、失う税収より得られるメリットのほうがはるかに大きいことは小泉総理の明晰な頭脳なら即刻判断できる。
21世紀最初に選ばれた小泉純一郎総理が20世紀後半に澱おりのように溜まった種々雑多なタブーを綺麗さっぱり払拭し、総理の主張する「新世紀維新」に全力投球することに期待したい。まさに、今こそ、日本の変わり目。いつまでも誤った自虐史観に囚とらわれ、謝罪外交を繰り返していてはいけない。
森前総理のビザ発給で中国のリアクションをマスコミは騒ぎ立てたが、その後の中国の姿勢を見れば、まさに案ずるより産むが易しで、謝罪するとばかり思っていた弱虫が、思いきった意見を述べれば、相手は吃驚びっくりする。日本は今までに中国にODAで3兆円もの多額な援助をしているわけで、これの打ち切りをちらつかせるぐらいの外交戦略を執らなくてどうするというのか。
小泉政権の誕生はマスコミに毒されずに真の世論が一つの形となった結果である。それは閣僚の配分権を有する派閥のしがらみでがんじがらめの政権ではない。政治を派閥から国民のもとに取り戻す政治が期待できる政権である。それだけに、田中外相にはおおいに勉強していただき、真の歴史観と国家観・世界観を確立してもらいたい。国益に沿った外交をエネルギッシュに真紀子流にやっていただきたい。彼女の勇み足と勉強不足が失脚に繋がり、小泉政権の人気凋落となって、またもや元の木阿弥にならないことを、新世紀維新に共鳴する者として願ってやまない。



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