小泉改革政権の誕生
自民党の総裁選挙で選ばれ、総理となった小泉純一郎氏。当初の苦戦の予想が予備選の導入により思わぬ大勝となり、高支持率を得ていることは快挙である。
総裁選挙で大勝したことと、高支持率を維持していることの大きな理由の一つに、田中真紀子氏の全面的な応援を受けて総裁選を戦い、その田中氏を外相に起用したことが挙げられる。
田中氏が自ら望んだとされる外務大臣。その外務官僚といえば、独自の外交官試験を経て選ばれたとの特権的エリート意識が強く、エリートの特性として自らが貶おとしめられることを極端に嫌うが、強権には迎合しやすく、長年に亘って、中国外務省の東京支局と言われるがごとく恫喝どうかつに屈して、多額のODAを垂れ流しながら、感謝もされずに言われるままに国益に反した謝罪外交を繰り返してきた。これほど自国の国益を考えず他国のお先棒を担いできた外交官は世界中どこを探しても見付かるまい。
国益追求のための機密費が、外務省の組織ぐるみの遊興に長年に亘って使われていたことも、外務省の特権的おごりであり、国賊的行為で正に平和ボケの証である。そんな実態を田中外相が「伏魔殿」と呼ぶのは当然である。対ロシア北方領土問題に関しても、影の外相として君臨してきた橋本派の鈴木宗男氏らが進めてきた「2島先行返還論」に異議を唱え、「4島一括返還」を主張した辺りは、高く評価したいものだ。
しかし一方では、やや勇み足、認識不足の発言の多いことも否定できない。日中国交回復時、ときの田中角栄首相の令嬢として訪中に同行したよしみもあってか、中国外務大臣との電話会談で政府統一見解でもない「李登輝前台湾総統のビザは今後は発給しない」と発言したことは外交の継続性からしてもおかしなことだし、アーミテージ米国務副長官との会談をドタキャンしたこともいただけない。アーミテージ氏はブッシュ大統領の親書を持ってきたうえ、彼はアジア外交のスペシャリストで、大変な知日家であり、日米同盟強化を進めようとする対日政策立案遂行の中心人物である。国会で親書の内容に質疑が及ぶや、事務方からまだ聞いていないと答えてその後訂正するなど、田中外相は国務大臣としての資質を問われても致し方がない。
ただ、こうした不用意なビザ不発給発言や会談ドタキャン問題が大きく報じられる背景には、田中外相と外務官僚との軋轢あつれきが存在することは言うまでもない。すなわち、外務官僚が田中外相を失脚に追い込むために仕掛けた巧妙な罠わなの匂いがする。アーミテージ氏との会談の重要性も、親書の内容も十分にレクチャーせず、中国外務大臣との電話会談においても、前内閣での李登輝氏に対するビザの発給経緯の説明なども不十分で、せっかく森前総理が決断した行為を無に帰すような電話での発言をリークするのは、狡猾な外務官僚の「外相潰し」以外のなにものでもない。
現在の小泉・田中内閣と言ってもよい80%超のバケモノ支持率を誇る小泉政権にダメージを与えるには、田中外相潰しが一番と狙い撃ちされている観も強い。
新しいものを創るには既存の慣例と機構をぶち壊わさねばならない。「破壊があってはじめて、創造できる」のである。その破壊者としての役割を立派に果たしているのが田中外相で、これが創造的な破壊であれば申し分ないが、そのためには自らをきちんとサポートするシンクタンクやブレーンで周辺を固めることが必要である。とにかく、田中真紀子外務大臣以外に、今の外務省を抜本的に改革できる人材は見当たらない。その田中氏を起用した小泉総理には、彼女を擁護しながら非効率・高物価社会の元凶である、政・官・業癒着のトライアングルを大胆に破壊してほしいものだ。
|