2001年 5月号


10年間下落し続ける地価

 公示地価が10年連続でダウンし、商業地では前年比で7.5%下落した。この10年間では58.5%の下落。住宅地のほうは前年比4.2%の下落で10年間で約3分の2となった。全国平均の公示地価はそうだが、バブル期に高騰しすぎた商業地においては実に10年間で地価は10分の1以下となった。このようなとどめのない地価の暴落が今日の日本の閉塞状況を作りだしている全ての元凶である。日銀はデフレ対策として金融の量的緩和と0金利の実質的復活を宣言した。しかし、今の物価の下落は冷戦終結による東側の低賃金労働力の参入と、IT化による技術革新による産業の効率化からくる、良い物価の下落であって一般的に言うデフレではない。政府の不況対策は、税のばらまきと金融対策だけで、超異常低金利によって預金者であるサラリーマンや年金受給者の本来もらうべき金利を収奪し、債務超過の大企業の借金の棒引き資金に引き当てている。それは、預金者から金融機関への所得移転である。
 銀行への公的資金導入、貸し倒れ必至の中小企業への政府保証付き貸渋り対策資金の貸付、本来必要でもない人へもばらまかれた地域振興券、これらの税を使っての救済は、納税者である健全企業や個人からの税の振り替えである。政府のここのところの弥縫策ともいえる不況対策の結果、国と地方を合わせた公的債務は650兆円になってしまった。今回の日銀の宣言もデフレ阻止との大義名分だが、本来の目的である地価の下落に歯止めをかけるためとはとても言えない。これはバブル潰しの共犯としての自らの責任をマスコミや納税者から追及されるのが恐いからである。
 そもそも不良債権の処理には、担保資産を現在の時価で処分するのが本筋だが、不良債権処理を急げといいながら、債務超過に陥った企業の多くは担保資産の処分もせずに金融機関とのもたれ合いで今も生き残っている。ゼネコンに至ってはご存知のように借金を棒引きしてもらって、これまた生き残っている。そしてその金融支援や借金棒引きをした金融機関も、リストラ・再建計画書を出すだけで、公的資金を投入されて、生き長らえている。今日の日本をダメにしたのは「自虐報道を繰返す」マスコミと「前任社長の推薦と社員の人気で選ばれる」サラリーマン社長、「経済も国際金融」も分からない日銀総裁速水氏と、「市場のメカも株式」も分かっていない宮沢恍惚こうこつ大臣と、人柄は良いが「力の論理も国益」も理解していない河野外務大臣である。
 モラル・ハザードともいうべき現象が罷まかり通っていながら、マスコミも納税者も沈黙している現在の日本は何かおかしい。さらに、債務超過に陥った企業が金融支援や借金の棒引きのおかげで市場から退場することなく、健全な企業と同じ市場で自らは今まで以上に悪くなる事はないと大胆に挑んでくる。税金を投入されて生き延びる企業と、自らリスクをとり税を払って国家に貢献する企業が同列で競い合うこともおかしい。
 本来、市場から駆逐される企業がゾンビの如く生き返り、あらゆる業界において厚顔無恥にもそのトップの座を占めている。そして、プレッシャーグループとなり、ハードランディングを阻止している。なぜ、そうしたことができるのか。まず、債務超過に陥った企業は別会社を作る。不良債権とセットの資産を本体会社に残しながら、営業権、優良社員、事業ノウハウを新しい会社に移転してその会社の経営に専念する。あるいは、最も収益源となる部門だけを別法人化して、そこで利益を生み出しながら、本体企業の不良債務はそのまま銀行に塩漬けとする。塩漬けされた担保付き資産は二重、三重に抵当権や賃借権が付けられ、法律的な不備も重なって短期賃借権を主張する不法占拠者を排除できずに、競売価格の下落を招いている。そしてその下がった価格で収益の上がっている別会社が買い取るのだが、本体会社はその競売価格が下がったことでさらに不良債務が嵩かさむということになるのである。
 しかし、その不良債務はもともと返す気のない本体会社の借金であるから、新会社は痛くも痒くもない。
 つまり、金融支援や借金棒引きに加え、別法人化の抜け道を使って、市場から敗退することなく、税金を払って健闘している企業にパイを引き渡さない。このように日本をこんな体たらくにしたのは政・官・業癒着の政治体制を作り上げた政治家と、特に選挙の洗礼も受けない偏差値教育覇者で、一次・二次安保世代の親中、親共、無日的体制を敷いた官僚の責任は極めて大きい。


日本の地価の価値を高めよう

 今や日本の株式商い額の4割近くは外資系である。マスコミが地価は下がれば下がるほどいいと言っているうちに、多くの物件はすでに収益還元価格以下の価格になっている。まだ地価は高いと銀行も担保評価を下げ続け、貸し渋っている間に、日本の優良資産が外資に買い叩かれている。
 収益還元価格とは、その土地を利用してどれだけの収益を上げられるかで、その土地の資産価値が決まる。経費・不動産諸税等、取得、保有、譲渡に関わる税はあまりにも苛酷で、その結果、非常に低い収益還元価格となる。取得と譲渡に多額の税がかかれば、取得も譲渡も敬遠するのは当たり前、不動産の流動化が阻害される。地価の暴落の元凶は現在の土地税制にあるといっても言い過ぎではない。資産デフレのケアを金融だけに依拠するには時間がかりすぎることと、痛みが多すぎると思う。いくら0金利といっても実質的な長期の金利は3%前後で、地価が下落し続けるかぎり不動産そのものを所有する魅力はない。しかも、地価の下落が続く中で固定資産税の課税評価額は今でも年々増加の一途である。さらに、特別土地保有税あり、現在凍結されているが地価税もあり、人口30万人以上の市町村税として事業所税の取得税と保有税があり、まさに日本は不動産いじめの税が罷まかり通っている国と言ってもよい。
 形あるものは必ず壊れ日が経てば減価する。しかし、日本では法人には認められている家屋の減価償却が、個人の住宅には認められていない。米国では、個人の居住用住宅ならびに別荘にも認められているし、併せて、住宅や別荘を取得した際の取得に関わる借入金の利息は全額経費として所得から控除ができる。
 おかしいといえば、最近私が売買価格7億円で購入したビルの場合、不動産取得税が4000万円、消費税が2100万円、登録免許税が4500万円、仲介手数料が消費税込みで2200万円と、合わせて1億2800万円。これに、その他印紙税と固都税を合計して約1億4000万円と、実に売買価格の20%にもなった。住宅を購入した時に、日本の場合、建物に関しては非常に高い不動産取得税と5%の消費税とダブルカウントされるのも腑に落ちない。登録免許税、印紙税も大変高額である。こうした不動産を呪縛している諸税制を撤廃することこそデフレ対策であり、不良債権処理策である。せめて、取得税と登録免許税、印紙税はすぐに売買価格や評価額にスライドさせずに一定額としてはどうだろうか。金融政策に偏った資産デフレ対策を、そろそろ税制面からケアする時期に来ているのではないだろうか。日本の地価の価値を高めるには、不動産政策減税を断行することである。


資産購入済みの国民を重視

 1991年当時の不動産に関わる税率は土地譲渡益重課税制度の名の通り、懲罰的意味合いが強かった。保有が2年以下の譲渡には当時の法人所得税に地方税を加えた税率65%にプラスして30%の重課税がかかり、実に合計すると譲渡所得の95%にもなる税を課した。日銀もわずか15ヵ月の間に2.5%の公定歩合を5回にわたって6%に棒上げし、当時の橋本大蔵大臣はノンバンク尻抜けの銀行への不動産融資総量規制を発動するなど、譲渡所得税は95%、金利は2.4倍、不動産業への銀行融資はしない。あわせて、それまでバブルを煽っていたマスコミも、今度は一転して一斉にバブル潰し狂騒劇を始めた。これでは地価が暴落しないはずがない。この責任の多くは大蔵・日銀・マスコミにある。
 現在、国民の80%以上が負債とセットで資産を取得済みであるにも拘わらず、地価が下がれば住宅が求めやすくなるとなおも叫んでいる。しかし、既に所有してしまった人が80%、今から求めようとしている人が20%の現状では、民主主義の原則から言えば、求めてしまっている人への配慮のほうに重点を置くべきではないか。資産を持つ人にとって資産の下落は喜ぶべきことではなく、本来、憂慮すべきことである。
 処分しようとしても処分できず、買い替えようとしても地価が下落している分、抵当権の抹消のためにお金かねを継ぎ足さない限り、新しい住宅の購入もできない。これでは住宅需要は1次取得層にのみ依拠することになる。
 常々思ってきたことだが、地価が高騰し続けることは確かによいとは言えないが地価が上がれば上がったところで安定させ、暴落を防ぐのが政治である。政治の無策でこの10年間、地価が連続して下落したことにより株は暴落し、為替は120円台の円安基調。バブル期に3万9千円にもなった株価は3分の1の1万3千円台。株価と地価のダブル下落がもたらす資産デフレ現象に歯止めをかけるには、低金利、量的緩和も一つの施策であろうが、前述したように思いきった不動産政策減税を断行するしかない。


平等化政策に蝕まれる日本

 日本の戦後制度の根幹は平等化政策にある。資産と所得と教育、それに地域の平等を目指して、農地解放、財閥解体、高相続税制、高累進所得税等、疑問も持たせずディベートもさせない日教組支配の丸暗記の偏差値教育と、豊かな人から税を取って貧しい人に還元する。また都市部で集めた税金を地方での公共事業の執行、地域振興と失対事業に当てて需要と雇用を創出し、地方に税を還元する政策を行ってきた。住宅に関しても平等化を求めて、一定の面積を超える土地の取得と保有に多額の税を課したり、住宅金融公庫の融資にも制限を付けた。大きく立派な家に住みたいのなら沢山たくさん税を払えということである。贅沢は目の敵にする税制。資産を持つ人には不利益を被る税制。苛酷な平等政策のもと、国民は貧しさの共有を強いられ、夢を失わさせられてきた。
 そんな戦後の平等化政策に慣らされた国民は、欧米と比べればわずか3%の消費税が5%になることには大騒ぎするものの、地価が下落して自らの住宅資産が3分の1になっても文句の一つも言わない。日本人は自らの利益よりも、トレンドやムード、マスコミ報道に流されやすい。
 戦後、冷戦のはざまで漁夫の利を得て、額に汗して貯めこんだ金融資産は1300兆円。それが冷戦勝者米国に奪い返されようとしている。米国債の購入に使われ、米国の好景気に貢献するとともに、その金でまた日本の優良資産や株式の買い占めに使われ、はたまた銀行の公的資金の導入資金、不良債権処理の借金棒引き資金となっている。それでも物言わぬ一般大衆と、それをケアしようとしない政府、これらが絡み合って今日の日本を閉塞社会にしてしまった。
 意図的に誤った報道を続けるマスコミも、それに盲従する大衆も、今や国家も国益も自らの利益すら考えなくなってしまっている。このままでは日本の21世紀が案ぜられる。



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