藤 誠志エッセイ
日本再生計画を提言する


 衆議院の選挙制度が小選挙区比例代表並列制に変わって初めての総選挙が行われ、自民党が選挙前勢力を28議席増やす239議席を確保し、新進党は4議席減らして156議席議席に止まった。全500議席のうち、どちらにも与しない共産党が得た26議席を引いた474議席を2で割った237議席にプラス1議席が比較過半数と考えるならば、辛うじてその過半数を超えた自民党の躍進は勝利と呼べよう。
 参議院においては自民党が過半数割れの現状なだけに、すぐに単独政権とはいかないものの、政策ねじれの連立を解消し一日も早く単独政権を確立してほしいものである。とりあえず、今回の選挙で当選した239議席に、保守系無所属や自民党の政策に共鳴する議員を加えて衆議院における過半数を確保し、景気回復を図るためにバブル期に土地の高騰を抑えるためにつくられた税制など諸政策を改正して、これ以上資産デフレが進行しない政策をとってもらいたい。
 さて、今回の総選挙を機に日本が21世紀に向かって新たなる前進を図るには、3つのことを政府がきちんとやらなければならないと私は考える。それが次に挙げる、国民が真の豊かさを実感し得る『日本再生への提言』である。
 まず一番目に、「行財政改革と大幅減税」。現在、大きな政府となっている最たる原因は、一旦中央に金(税金)を集め地方に再分配しようとする中央集権財政にあり、これに各種規制とその緩和のさじ加減に天下り官僚が絡むことが、政・官・業の癒着の元である。いろいろな批判にも拘らず天下り官僚が絶えないのは、高齢化時代における官僚の若年定年(55歳前後)慣習にあるのではなかろうか。この定年制を延長して65歳前後までに大幅に延長すれば、官僚は定年後の心配をせずに業務に最後まで精励できることになる。そうなれば、天下り先の確保に奔走する必要もなく、現在既に120機関もあると言う特殊法人を無闇に作る必要もなくなる。もちろん定年後は関係先への再就職は禁止、外郭団体はどうしても必要なものを除いて全て撤廃し、特殊法人とその関係子会社は小泉純一郎氏の唱える郵政三事業(簡保・郵貯・年金)と併せて株式(出資)を上場処分し民営化を図る。
 官僚が特殊法人を作り、その特殊法人の赤字の垂れ流しを税金で補い、特殊法人の子会社がボロ儲けをした利益を内部留保して、天下った官僚がその恩恵に与かるという構図はなくなることだろう。すなわち、特殊法人の廃止と現在数千はあると言われる関係子会社の民営化が達成されれば、国家的な税金のムダ遣いと数十兆円くらいはあると思われる株式処分金により財政再建と天下り問題は一挙に解決できるはずである。こうした行財政改革と行き過ぎた高福祉制度、民間と比べて極めて高くて必要性の薄い公共事業にメスを入れるとともに、市場原理の導入を図り、各種官庁仕事を民間に移管して現行公務員をニュージーランド並みに大幅削減をして小さな政府を目指して初めて、大幅減税が現実味を帯びた話となってくるのではなかろうか。

 二番目には、「高物価社会の改善」。欧米並みの暮らしやすい物価にするためには、規制緩和と談合排除による競争原理の導入、輸入の自由化とともに国際的に見ても非常に高い公共料金の引き下げが必要なことは言うまでもない。その施策の一つとしてぜひとも推めてもらいたいのが、流通コストの大幅低減であり、そのためには、ガソリン税の引き下げと高速道路料金の無料化、インターチェンジの廃止といった思い切った施策が必要であろう。そうなれば、目的地に最短コースで行けることになり、この面でもコストの削減ができるはずである。
 一方、現在の道路行政にもムダは様々にある。目に余るのが道路の毎年の維持管理費用である。きちんと造れば道路とは基本的にはそんなに補修のいらないものである。私は、車を運転して欧米をはじめ世界数十カ国を見て回った経験を持つが、これまで毎年補修をしているような道路に出くわしたことはない。少々の凹凸はあったとしても大型車の通行で轍などできない構造だからである。
 しかし、日本の場合、維持管理業者と癒着し毎年補修工事を発生させなければならないために、また一年(ひと夏)も走れば轍ができて補修工事が必要となる舗装材を使って道路を造らせているため、この時期になると数キロメートルも走る毎に道路工事に出くわし、交通渋滞を引き起こしている。こうした行政と維持管理会社の癒着による欠陥道路の車軸幅の違う轍により、雨の日に多くの車がスリップし物損事故はもとより多くの死亡事故も起こしているのである。
 さらに、道路の安全施策や電柱・標識も世界の常識から見て幼稚で不安全極まるものばかりである。不必要な箇所にあるコンクリート製の舗道ブロックで囲まれた所々途切れたグリーンベルトもその一つである。このグリーンベルトを取り払うなどして、欧米ではよく見掛ける上下車線がラッシュに合わせてセンターラインが可変できるような道路があってもよいのではないかと思う。上下4車線とグリーンベルト跡地に可変の道路1車線を用意して、朝夕の混雑具合に合わせて3車線と2車線にすれば、車はスムースに流れ、通行量を増やせ、事故防止にも繋がると思うのだが。そうするだけでも物流コストは低減されるに違いない。また、赤信号の場合、日本では左折は禁止だがアメリカなどでは大部分の交差点において進行方向側へのターンは赤信号でも許されている。交通の流れを渋滞させないためにもこうしたシステムの改善も行政にお願いしたいものである。
 一方においては航空業界への新規参入も容易に行えるよう規制緩和を求めたい。新規の参入が競争を煽り、航空運賃の切り下げに拍車を掛けることは間違いない。北海道にスキーに行くより、何十倍もの距離のあるカナダにスキーに行くほうが安いという笑い話のようなツアーが現実にあるのだから。現行の国内運賃の談合独占価格は国際的にみても異常と言えよう。
 こうした陸海空の運賃コストを国際基準にまで値下げすることを促すことと問屋・中卸しと流通経路が複雑で多層的な流通システムの単純化を図り、ファクトリーアウトレット(工場産直)センターを設置したり、大店法を廃止して大型ショッピングセンターをつくりやすくすることが、さらに流通コストの大幅低減に直結することは言うまでもない。

 三番目は、「生活をエンジョイするためのバックアップ体制の確立」。アメリカではごく普通の人でも別荘を利用しボートやキャンピングカー、軽飛行機などで余暇を楽しんでいる、とにかく、日本は貧しい。
 米国では、住宅を取得するために借りた資金の金利を全額、損金算入でき、本宅以外の別荘もその恩恵に預かれ、同時に、日本では法人にしか認められていない建物の償却が個人の住宅でも認められ、その年の収入と損益通算が可能なのである。これだけの優遇があれば、住まいは買いやすくなり、より大きな家に住めることにもなろう。
 日本も、そろそろ戦後の住宅政策を変える時が来ているのではなかろうか。住宅金融公庫制度のように高級な住まいには融資しない、大きな住まいには融資の規制をする、といった発想では、住まいに豊かさを求める今日では機能していないと言われても仕方あるまい。さらに、住宅公団は官僚の大口天下り先と化し、官業による民業の圧迫ともなっている。談合で高コストで造られた住まいを大量生産し続けているが、民間の住まいと比べて評価しえないというのが率直な感想である。
 やはり、住まいづくりは全て民間に任せて、税制面で国がサポートする体制が望ましい。豊かさを実感できる大きな住まいの取得に国が寄与する、本来、国家の姿はここにあると言えよう。
 さらに、現在非人間的な詰め込み・偏差値教育の高校と入学後はその反動でディズニーランドからアルバイト先に通うと言われる教育制度、高齢化と少子化が同時に進行している社会での各種社会保険・厚生・医療保健制度の見直しを図るとともに、サマータイム制度の導入や国民皆が気軽に活用できる休暇の取り方など、豊かさを国民が実感するために政府がしなければならない施策も数々あることは言うまでもない。
 また、マスコミは世界で起こっている今を報道することが少なくワイドショー的ニュースを繰り返し流し、視聴率のみに関心を寄せ、単に挙げ足取りとやっかみとひがみ根性の記事に終始することを改めてもらいたい。マスコミも世界観と歴史観を持ってグローバルな観点から天下・国家のことを見据え、第四の権力の行使に自信を持ってほしい。
 とにかく、選挙が終わったばかりで早計かもしれないが、早めに次の解散総選挙を行い、単独過半数の安定政権をつくり、『行財政改革・大幅減税』と『高物価社会の打破』、『豊かさの実感できる住まい・暮らしやすい国づくり』を骨子とした「21世紀日本再生計画」に着手して頂きたい。