好景気の象徴・ラスベガス |
先日、提携先でデトロイトにある米国最大の住宅機器会社・マスコ社のマヌーギアン会長の招待を受けて、6泊8日の日程で米国各地を駆け足で旅してきた。マスコ社は6機のビジネスジェット機を所有しているが、今回の旅では、会長愛用のフランス・ファルコン社製の最新鋭小型ジェット機に搭乗する機会を得た。その日の気流が良かったことと、飛行高度が1万1千メートルと高かったせいもあり、民間のジャンボ機よりもハイスピードの快適な飛行を体験した。 飛行機は8席だが、バーあり、冷蔵庫ありの豪華仕様で、操縦席より眺めたグランドキャニオンの景観は特に素晴らしかった。デトロイトからロサンゼルスまでの3時間の時差を4時間ちょっとでひとっ飛びし、ロサンゼルスからレンタカーで、曲芸飛行家で友人であるタッカー氏が招待してくれたマーチ空軍基地に向かった。招待席は軍の高官や関係者、またその家族が観覧する席で、40万人の群集が見守る最前列を、VIP席に向かってタッカー氏の乗用車で滑走路を突っ切った際の快感は生涯忘れられない。 眼前に翼を広げるF−117ステルス攻撃機やB−1爆撃機、さらにSR−71戦略偵察機などの各種の航空機にしばし見惚れ、そして、タッカー氏が自ら設計製作した飛行機で演じる曲技飛行の素晴らしさに魅了された。急上昇急降下に急旋回の離れ業、地上すれすれに飛ぶ背面飛行など、日本では許されない息を呑む神業の連続に私は酔いしれた。 カリフォルニアの燦燦さんさんとした陽射しのもと、愛機から飛行を終えて颯爽と降り立ったタッカー氏は、一番先に私に握手を求めにやってきた。振り返ると、私の後ろにあるサイン席には既に何百人というタッカーファンがサインを求めて列をなしていた。私は基地フェスティバルで、軍とそれを支える国民の連帯感の強さを肌で感じると同時に、勇気ある人には惜しみない称賛を贈る米国人気質も感じ取った。 その日、SR−71の模型やTシャツのグッズを販売していた人は、かつてベトナム戦争でF−4ファントム戦闘機を操縦していて撃墜され瀕死の重傷を負いながら奇跡の生還を果たしたパイロットだった。「捕虜となって助かったのか」という問いに、彼は「撃墜された私を、友軍は敵を牽制しながら決死の覚悟で救出してくれ、野戦病院に運び緊急手術を施してくれた。おかげで九死に一生を得たよ」と淡々と語った。腕や胸の火傷の跡は刺青いれずみを消したものかと思っていたが、それは炎上する機からの脱出で、首から下の全身を火傷した名誉の負傷の跡だった。普通の人ならば体験することのない恐怖を味わったにも拘わらず、彼はその後、4年間のリハビリにより甦って空軍に復帰し、戦略偵察機SR−71のパイロットに選抜され乗務する栄誉を授かった。そう誇らしげに語る彼に私は畏敬の念を覚えたことは言うまでもない。 私は現在、「航空自衛隊小松基地金沢友の会」の会長をしている。そういう面から、飛行機や軍への思い入れは人一倍強いしパイロットにも親近感を持っている。この日も、マニアが買い取ったロシアのミグ戦闘機の編隊飛行や、第二次世界大戦時の戦闘機による模擬空中戦やA-10対戦車用重攻撃機による模擬爆弾投下には胸が躍った。 マーチ空軍基地を後に、その後1年ぶりのラスベガスを訪れた。1年の間に、パリスとベネチアンという2つのホテルがオープンしていた。前回はベラジオの光と音楽と噴水のショーに魅了されたが、今回はエッフェル塔と凱旋門を模したパリスも素晴らしかったし、ホテル内をゴンドラが行き交うベネチアンにも目を奪われた。そしてこのラスベガスの変貌ぶりを見ながら、米国の8年に及ぶ好景気を最も象徴しているのが、ここラスベガスだと再認識させられた。日本の低金利による恩恵とIT革命による米国の景気絶好調の成せる業がここにある。 |
馬鹿馬鹿しい「神の国」騒動 |
その夜、ラスベガスで手にした明日付の日本の朝刊で、私は小渕前総理の死去のニュースとともに、友人で参院議員の馳浩氏が衆院選に出馬を決断したことを同時に知り、胸が高鳴り驚いた。この2つのニュースを背に日本に帰ってきた私を、さらにビッグニュースが待ち受けていた。森総理の「神の国」発言である。石原都知事の発言から意図的に「不法に入国した」を外して報道した「三国人」発言報道が大問題となった記憶のさめやらぬ中、またマスコミ各社が「神の国」発言を大きく取り上げて大騒動に発展していた。 森総理をよく知る私にすれば、「神の国」発言はマスコミが批判するようなものではなく、彼の人柄の良いリップサービスが災いしたもので、発言の場が神道政治連盟議員懇談会結成三十年での挨拶であり、その挨拶は次の通りである。『神様を大事にしようという最も大事なことをどうも世の中は忘れているのではないか・・・』(中略)『日本の国、まさに天皇を中心とする神の国であるぞということを、国民の皆さんにしっかりと承知して頂くという思いで我々が活動をして三十年になる。』(中略)『人の命が大事だということを考えよう。お父様、お母様から頂いたことは間違いない。しかし、この人間の体ほど不思議なものはない。これは神様から頂いたものということしかない。そうみんなで信じようじゃないか。 神様であれ、仏様であれ、それこそ天照大神であれ、神武天皇であれ、親鸞聖人さんであれ、日蓮さんであれ宗教は心に宿る文化なんですから。そういうことをみんな大事にしようということをもっと教育の現場で何で言えないのかなあ、「信教の自由だから触れてはいけない」のか、そうではない。信教の自由だからどの宗教も、神も仏も大事にしよう。ということを、学校でも社会でも家庭でも言うということが私はもっともっと今の日本の、精神論から言えば一番大事なことではないか、こう思うのです。私はあまり信心深くない方ですが・・・』というものである。 問題の発言は、前後の文章を読んで全体を捕らえれば、別段批判するに値するものではなく、まして今の日本の中で、日本が国民主権の国ではなく神の国であると思っている人や、そうしたいと思う人は森総理を始めただの一人もいないことはマスコミも分かっていながら発言の一部だけを捕らえ、非難報道を続け、扇動するマスコミは全く罪つくりだ。 |
幹事長時代からマスコミと軋轢 |
かつて森総理は幹事長時代に地元での後援会で番記者を締め出したことがあるが、それ以来、マスコミとはギクシャクした関係が続いていた。総理になった後も昨日のスケジュールを聞かれ、「寝る時間は寝てしまったから分からない」とやり返したことが問題となった。しかし、どこの国に首相や大統領の起きてから寝るまでの一日を分単位で報道する国があろうか。 米国のマスコミや議会などは、大統領に就任した最初の100日間の施策は特に詮索せずに、どんな政策を実行しようとしているのか、思う存分活躍させ、100日間経って初めてその実績の評価をするのがしきたりである。大統領はその間に一生懸命に自らの政策を軌道に乗せようと努力する。 それが日本では急な就任という同情する面があるにも拘らず、学生時代からの行動や過去の発言のあら探しに、いつ寝たか起きたかなどの細かな質問に対する受け答えなど、「神の国」発言だけでなく、就任時からすでに一部の週刊誌などでは総理を貶おとしめようとスキャンダル探しに躍起になっていた。日本では、誰かが成功したり昇任したりすると、必ずやっかみとひがみから、足を引っ張ろうとする傾向がある。ましてや今回のような思わぬ形での総理就任であるからなおさらである。 森総理は明るく朗らかで大きく、人間的言葉でしゃべることができ、国際ウケする面もあり、久しぶりにサミットに出ても様になる人物であるにも拘らず、非難報道に明け暮れる人たちは自分の日頃も省みず、言葉じりや過去を詮索し、自らの国のトップ・内閣総理大臣閣下を誹謗するなど、日本の国益を考えても大きなマイナスである。今回のようなことで発言の全てをこと細かくチェックを入れるようになると、また官僚が作ったペーパーを棒読みする総理になってしまう可能性がある。いま求められているのは自分の言葉で語りかけるリーダーではないだろうか。これでは総理になる人はジョークも言えない無菌室でのロボットみたいな人しかなれないという、情けない国になってしまう。 |
一国の首相に対する非礼 |
先般の党首会談で総理が着席を促したにもかかわらず、鳩山民主党党首は立ったまま、わずか3分間で辞任を迫って党首会談を一方的に終わらせてしまった。私はこれには呆れ果てた。まさに非礼極まりない。こうした暴挙こそ、マスコミは大きく報じなければならないのではないか。森総理は国会で選ばれた総理大臣である。民主的な手続きを経てなった国の最高責任者である総理に対する、度重なる非礼な振舞を許してしまうマスコミを容認することは日本の国益を危うくすることに繋がる。 私が最も危惧しているのは、こうした「神の国」発言が大事な衆議院選挙の結果を左右する馬鹿騒ぎにならないかということである。かつて11年前の消費税のバカ騒ぎの選挙結果がいまだに影響し、参議院ではその後遺症を引きずっている。日本の国民も今や大人の論理でものを考え、天下りと利権選挙による政官業の癒着を断ち切り、高物価高税率の非効率社会を正していかなければいけない。 東西冷戦が終わって、米国は虎視眈々と冷戦時代に漁夫の利で貯め込んだ1300兆円の金融資産を狙っている。知的所有権と称する特許権・意匠登録・著作権などと合わせて、デリバティブと称する詐欺的金融手法でもって、この金融資産を掠め取ろうとしている。 |
脅かせば金を出す国 |
湾岸戦争時に、日本は人的な貢献をせず金銭的な貢献をしたものの、貢献度が低いと諸外国から叩かれた。しかし、その際、脅かせば金を出す国というレッテルを貼られてしまった。最近、米国において、55年も前の戦争中の日本企業が行った損害への賠償訴訟が起こされ、100兆円にものぼると見られる賠償が求められるやも知れないという。 こうした理不尽極まりないことが続くのを傍観していてはならない。国家、国民、マスコミがきちんと国益を考えて、汗水垂らして貯めた貴重な金融資産を守っていく努力を惜しんではならない。それが21世紀を迎える日本の使命である。周りを見渡せば、日本を取り巻く国々の状況は激変する気配が濃厚である。南北朝鮮、台湾、中国、ロシア。どの国に異変が起こっても、日本は無関係では済まされない。 そんな厳しい地勢学的位置にありながら、この先最大4年間に亘る政治勢力図が決まる衆議院選挙が、何の政策論議もせず、一片の失言で左右されることに憤りを感じる。故意に偏った報道が選挙を操り、国益を危うくすることのないことを願ってやまない。 ワイドショー的報道など過度に発達しすぎたマスコミの弊害も多いが、日本は元来、判官びいきの国である。理不尽な報道・「神の国発言批判」で底まで落ちた内閣支持率は、そのうち批判に便乗している野党の人気を下げ、ちょうど選挙の頃には内閣の支持率がまた上がってくるものと思われる。野合の民主党には何の理念もないがゆえに政策論争を避け、ひたすら繰返し「神の国」発言の批判をしているが、それはいずれ上を向いてツバをすることとなろう。そして、禊みそぎを受ければ、森政権も本格的長期安定政権となるであろう。 |
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